研究概要 |
平面に対する遊離砥粒を混入した加工液の吸引キャビテーション流による基本的加工特性について,昨年度に得られた知見を基に,本年度はまず直管の内面を精密加工する技術の開発に取り組んだ。ガラス直管の片端からポンプで吸引することによって管内に遊離砥粒(WA4000)を混入した加工液を流動させ,管の中心に所定径の鋼球(絞り)を設置することによって流路断面積を局部的に減少させ,キャビテーションを発生させた。遊離砥粒を混入しない水のみの流動による観察では,管内の鋼球の中央(管内壁と鋼球とのクリアランスが最小となる位置)から流れの後方にわたり顕著なキャビテーションの発生が認められた。遊離砥粒を混入した実験では,表面粗さの改善は確認されたものの,加工前のガラス管内面の形状精度が比較的低く,正確な加工量の特定は困難であった。なお,加工液の流動に伴って鋼球の指示部が振動し,キャビテーション流安定しないことが確認されており,絞りの指示方法について今後検討する必要がある。また,本加工法ではガラス材料に対して材料除去速度が極めて小さく,ナノメートルオーダの表面粗さが得られることから,ガラス基板表面への新しいマイクロファブリケーション技術としても利用することが考えられたため,ガラス基板表面にマスキングを施し,吸引キャビテーション流による加工実験を行った。その結果,ガラス表面に数百ミクロンの幅で深さサブミクロンの矩形断面溝を高い形状精度で形成することに成功した。また,マスクパターンによって二段溝や二段ディンプル形状などのマイクロ形状が得られることが確認された。
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