研究概要 |
本研究では、新しいタイプの炭窒化チタンタングステン(Ti,W)(C,N)膜に着目し、(Ti,W)(C,N)膜におけるCとNの成分割合が工具摩耗を及ぼす影響を調べることを目的とする。そこで、TiW合金ターゲットを試作し、超硬合金K10種を母材とし、PVDコーティング法によって(Ti,W)(C,N)膜を形成させた。さらに、(Ti,W)N膜の形成においては、バイアス電圧は-30v、-150v、-300vの3種類に変化させた。また、(Ti,W)(C,N)膜、(Ti,W)C膜の形成においては、バイアス電圧は、-300vで一定とした。次に、被膜特性(被膜厚さ、被膜硬度、スクラッチ強度)の測定を行った。さらに、これらの試作PVDコーテッド超硬工具でクロム鋼SCr420H、ステンレス鋼SUS304,ステンレス鋼SUS310s,焼結鋼および焼結ステンレス鋼の切削を行い、TiN、(Ti,Al)N膜PVDコーテッド超硬工具の工具摩耗と比較した。 得られた主な結果は次の通りである。 1.被膜にWを加えた(Ti,W)(C,N)膜のスクラッチ強度は,TiN,(Ti,Al)N膜に比べかなり高かった。 2.SCr420H切削においては、(Ti,W)(C,N)膜は、市販のTiN、(Ti,Al)N膜に比べ、耐摩耗性に優れていた。また、(Ti,W)(C,N)膜の中では、バイアス電圧-150vの(Ti,W)N膜が耐摩耗性に優れていた。 3.SUS304、およびSUS310S切削においては、バイアス電圧-300vの(Ti,W)N膜が耐摩耗性に優れていた。 4.焼結鋼切削においては、(Ti,W)N膜コーテッド超硬工具は,(Ti,Al)N膜コーテッド超硬工具と同程度の摩耗進行となった. 5.焼結ステンレス鋼切削においては、(Ti,W)C膜が耐摩耗性に優れていた。
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