研究概要 |
転がり軸受においては,回転精度は要求性能のひとつではあったが,第1条件となることは少なく,研究分野としてはこれまであまり注目されていなかった分野である.しかし,ハードディスクスピンドルモータのように,転がり軸受にも10nmレベルの回転非同期振れ(NRRO)が要求されるようになってきた.ここまで要求精度が高くなると,転がり軸受各部の幾何学的形状誤差を向上させるだけでは実現が難しく,他の影響要因を解明する必要がある.また,十分な精度で振れを測定できる装置も必要となる. 本研究では,1.nmの精度が保証できる回転非同期振れ+軸受の内部観察が可能な装置の開発,2.この装置を用いた回転非同期振れの影響要因の解明を行った.軸受内部観察機能を付加した回転精度測定装置は,申請者がこれまでに行ってきた研究をベースに完成させることができた.また,この装置を用いた振れに影響を与える要因解明については,次のことが明らかになった. (1)外部から潤滑油を加えることにより潤滑変動を誘起させた状態で回転非同期振れを測定したところ,潤滑変動が起きた瞬間に保持器回転周期振れが増大する現象が観察された.nmレベルの振れにおいては,潤滑剤が影響することを明らかにすることができた. (2)転動体は基本的には保持器によって等角度間隔に分けられているが,保持器ポケットにはすきまがあり,厳密には等間隔ではない.転動体の間隔を変えた実験を行うことにより,不等配置があると保持器回転周期振れの倍周期の振れが出現することを明らかにした. (3)1つの軸受に組み込まれている転動体の直径は,サブμmレベルでは異なっている.組み込まれている転動体の直径差が原因で保持器回転周期振れが発生するが,同じ直径差の転動体においても,その配置によって保持器回転周期振れの大きさが異なることを理論解析と実験によって明らかにした.
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