研究概要 |
1995年にNASAのガリレオ探査衛星は秒速49kmで木星大気圏に突入した。自己溶融型耐熱材であるアブレータは,大気圏突入時の過酷な空力加熱に耐え衛星本体を守ったが,突入時の飛行データからアブレータの損耗厚さが,前方淀み点側では予測値の半分であり,下流側では予測値の倍に達したことが判明した。 本研究ではこれまでに,定常アブレーションと熱化学平衡を仮定した輻射流れ場解析コードを用いて,よどみ点下流側で見られた予想外に大きな空力加熱率発生の原因を解明し,アブレータ損耗量分布の再現に成功した。しかし,よどみ点側で生じた予想より小さい損耗量については,衝撃層の非平衡電離過程との関連が指摘され,その影響の見積もりがなされているが,まだ数値計算で再現されていない。損耗量が予想より小さくなることは熱防御システムの設計自体からは安全サイドである。しかし,過剰な熱防御は重量の増大を招きペイロードを制限するために,よどみ点側の損耗量分布の解析精度を高めることは重要である。 最終年度は,非平衡性を考慮した突入流れ場の計算を実際に実施する前段階として,マルチバンド輻射モデルの整備を進めた。並進温度と電子密度の両者の依存性を考慮したマルチバンド輻射モデルの精密化を進め,その精度等を明らかにした。今後,水素の非平衡電離過程をうまくモデル化して数値解析に組み込むことができれば,電子雪崩現象を含めた衝撃層内の非平衡電離解析が実現でき,よどみ点における輻射加熱履歴の再現を試みることが可能になる。一方,衝撃波管を用いた過去の実験データやその解析に関する文献等の調査も行った。
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