研究概要 |
アークプラズマ風洞により,窒素を作動ガスとする弱電離高温気流を安定に生成できるようにした.投入電力は9kW(150V×60A)で,マッハ数が5および6の高温窒素気流中に球頭円柱物体を設置し,その前方における流れの発光分光計測を行った.振動温度については物体の有無による差も流れのマッハ数による差も見られず,空間でほぼ一様な6,000±700Kの温度範囲にある.一方,回転温度についても物体の有無による差はなく空間的にほぼ一様な結果となった.なお,マッハ数5の場合3,000±500K,M=6の場合が2,500±500KとM=5の方が若干高い.この原因は,電子および分子間でのエネルギー交換の所用時間と頻度によるものと考えられる. 真鍮製の円板モデルを使い,それが高温気流によって表面が破裂する直前の成分比の変化をX線マイクロアナライザ(EPMA)で調べた.円板前面では銅及び亜鉛の組成比が逆転した.しかし円板内部の成分に変化は見られず,この成分変化は物体表面のごく近傍に限られている. 次に,数分程度の短時間で材料の硬化が可能かどうか,ポイント的な材料硬化の可能性,および傾斜機能性材料開発へのフィジビリティスタディを目的に,高温窒素プラズマ気流の試験条件をパラメータとして,炭素綱の窒素プラズマ硬化について調べた.その結果,ビッカース硬度230の窒化鋼(SACM645)が最大で630にまで達した.空間的に硬度が滑らかに変化する傾斜機能性材料の特徴も確かめられた. 窒素気流中に酸素を混入し,中性のNIおよびOI原子による電子励起温度をボルツマンプロットにより調査した.その結果,球頭円柱物体の前方0.2mmにおけるNIが17500K,OIが18500Kとなった.高励起順位による放射光から得られる電子励起温度は自由電子の並進温度に等しく,自由電子温度が化学種に依存しないとすると,自由電子温度は18000±500Kと推定される. プラズマ気流の特性を知る必要性から数値解析プログラムの開発を始めた.第1ステップとしてベースプログラムの開発を終え,N_2,O_2,N,O,NO,NO^+,e^-による化学反応を流れとは独立に行うプログラムを併用し,プラズマ気流の数値シミュレーションを行った.解離による吸熱作用のため,ショックレイヤー内の温度は大幅に低下し,完全気体を仮定すると6300Kの気流温度が実在気体効果で3500K弱にまで低下することが示された.このプログラムは改良の余地が十分に残っている.
|