研究概要 |
昨年度に引き続いて,ナトリウム浴焼入れ時の相変態,変形及び残留応力の予測精度の向上を目的として,炭素鋼円柱試片及び鋼円板試験について焼入実験を実施し,その結果と熱処理プロセス解析コードでの解析結果の比較によって解析精度の検証を行った。焼入れ時の試片の冷却曲線,焼入れ後の硬さ,試片形状・寸法,及び残留応力の測定を行い,'複数の熱処理プロセス解析コード(GRANTAS, DEFORM-HT)による熱処理シミュレーション結果と比較した結果,これらの実測値と解析値が比較定期良い一致を示すことを確認し,解析精度を検証することができた。ただし、残留応力の解析精度に関しては,実測値と解析値との差が大きい場合があり,特にシミュレーションに用いる材料特性値(特に応力-ひずみ特性や変態塑性特性関係)の精度について,今後の検討が必要であることが確認された。さらに,解析結果の分析により,ナトリウム浴焼入れでは,高温域で鋼部品の全表面が均一に急冷されることで表面近傍の組織のみ冷却初期に硬いマルテンサイトになるためにその後の部品形状の変形を抑制する効果があること,及び,部晶内部め相変態が低温域における緩冷によって比較的一様に生じることが変形を抑制されることを確認した。また,部品表面近傍が冷却初期に均一急冷されることによって部品表面に圧縮残留応力が生成されることについても確認できた。次に,実際の鋼部品として,キー溝を有する鋼軸や角穴ダイスなどの焼入れ実験と解析を実施し,変形が起こりやすい非対称形状の鋼部品や焼割れが起こりやすい形状の鋼部品をナトリウム浴焼入れすることによ,って変形や割れの抑制が実現できること,また,熱処理シミュレーションによって最適な浴温を事前に選択することが実用化にとって有効であることを確認した。最後に,3年間にわたって進めた研究成果を総合的にまとめた。
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