研究概要 |
予混合圧縮自着火燃焼に代表される次世代の燃焼技術開発においては,詳細化学反応モデルが不可欠とされている.本研究では,詳細化学反応モデルを任意の飽和炭化水素およびその混合物について自動生成する,技術支援ツールを開発した. 数千から数万におよぶ素反応過程は,単なるデータベースからの構築は困難であり,類似の化学反応に関する知識を元に,経験則として整理された知識ベースの構築によって成されなければならない.これらの化学反応の知識は,既存の実験結果に加えて,本研究において得られた実験結果・本研究で行われた量子化学計算の結果を活用することによって得られた.特に自着火現象において支配的な役割を果たすアルキルペルオキシラジカルの競合する異性化・分解過程については,本研究によって得られた量子化学計算の結果が不可欠であった. 開発された詳細化学反応モデルの自動生成ツールは,以下の点について検証を行った.第1として,オクタン価の基準燃料であるノルマルヘプタン,イソオクタンの自着火遅れ時間の実験値をよく再現した.第2には,飽和炭化水素に限っても多種・多様な燃料分子について,その着火性の傾向を再現することを確認する必要があった.これは,0次元圧縮自着火における着火限界圧縮比を,RON(リサーチ法オクタン価)の実験値が既知である,50種類の飽和炭化水素について計算することによって行った.その結果,本研究で開発した自動生成ツールによって生成した詳細化学反応機構による着火限界圧縮比とRONとの間には,良い相関関係が見出された.このことは,本研究による詳細反応モデルが,多くの炭化水素について,その着火性の傾向を少なくとも半定量的に予測可能であることを示している。この他に,着火性に関して,個々の燃料分子は従来から知られているオクタン価などの指標のみでは記述しきれない,いくつかの性質を示すことが見出された.
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