研究概要 |
河川における堰の設置は治水計画における重要な位置を占めており,予算上でも大きな問題となる。堰には固定堰や可動堰などがあるが,流量のコントロールには可動堰が有利である。これらの堰には,水流が堰を越えて落下するときの水膜(越流水)が振動(自励振動)を起こすことが知られている。 その振動防止方法は,堰に取付けたスポイラで越流水膜を割き,越流水膜と堰の間に閉空間が形成されない様にすることであるとされてきており,また実際に振動の防止に効果を上げてきている。しかし,近年の可動堰の大型化に伴い従来のスポイラでは対処できない場合が発生しており,低周波の騒音問題が起っている。 本研究では,振動発生時におけるデータの収集とその解析により振動発生メカニズムの同定を行った。まず,落下水膜の振動の発生原因を調べることを目的とし,鉛直に落下する水膜の挙動について実験と解析を行い以下のことを明らかにした。 振動の発生メカニズムは,微小な乱れが生じた水膜が落下することによって圧力の乱れを引き起こし,閉空間を介して横方向に揺する仕事に変換されることで更に大きな乱れへ成長する,水膜が落下するエネルギのフィードバックであると考えられる.落下水膜を横方向に揺するために必要なエネルギの条件から計算をすると,Sの値は整数値+1/4程度となり,実験結果と一致する. 閉空間を介したフィードバックを遮断するように,閉空間内部にバッフルを設置すると振動が起こり難くなる.その最適な取り付け位置は水面から100mm程であり,これは最も大きな仕事をする,水面付近の半波長が上流に供給する圧力を遮断しているためであると考えられる.
|