研究概要 |
報告者はこれまでに,電磁力を利用した柔軟磁性媒体の非接触支持・搬送技術の研究を行い,その実現性について公表している.また,この数年は切り板の非接触支持の基礎研究を行いその成果を発表している.これら一連の研究課題は,鉄鋼プロセスにおける鋼板の搬送が有力な応用例として挙げられる.実際の製鉄所の鋼板熱処理工程を考えた場合,長大な連続ラインがその大部分を構成しており,媒体と駆動用ローラ間における周辺空気の巻き込み現象にともなうトラクションの低下とそれに起因するスリップ・蛇行運動の発生,搬送方向の変換時における媒体とロールの接触,媒体とローラ間の摩擦など,解決すべき重要課題が数多く存在する.しかしながら,これらの課題は従来個々の生産現場において蓄積されてきた経験的技術によって処理されてきており,学理に基づいた系統的なアプローチによる取り組みは産業界からの強い要望にもかかわらず,ほとんどなされていないのが現状である. そこで本申請課題では,特にローラ支持間の長い乾燥工程などにおいて,ローラ部から発生する外乱が波動を生成し,これが媒体中を伝播することによって弾性振動と複雑に組み合わさり,塗装むら等を発生させる問題に着目した.塗布むら,傷発生などを極力抑えた製品歩留まりの向上,生産性の向上など,鋼板表面品質の改善を目的として,電磁力技術の応用によるこれらの問題解決策を提案した.その結果、(1)走行する連続柔軟媒体に関する理論モデルを構築し振動発生メカニズムを解明できた.(2)高速走行状態における連続媒体の力学的挙動を把握するために,鉄鋼プロセスを模擬した実験装置を用い,構築した理論モデルの妥当性を確認した.(3)本システムに最適な制御系を設計し,計算機シミュレーションによって設計手法の妥当性を明らかにした.(4)センサ,電磁石の最適配置を理論的に解明し,さらに永久磁石を有効利用したローコストなハイブリッド非接触案内制御機構の開発とその性能最適化を図った.(5)ディジタル制御実験を実施し,理論と実験の比較によって構築した制御系の有効性と実用性を明らかにした.
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