研究概要 |
本研究では,制御された動力機械を人間が物理的に直接操作する作業形態の人間-機械系「人間-機械協調作業系」において操作性の高いシステムを実現するために,有効な操作支援法とその制御系設計指針を探ることを目的とした.特に,複数自由度の作業について,操作対象の動特性に対する作業者の自己整形特性と,作業対象の動特性変化が作業者に伝わる感度に着目した.まず,平面内の2次元3自由度作業のシミュレーション実験を可能にする協調作業シミュレータを既設の実験装置を利用して開発した.以後3年間にわたり,このシミュレータを用いて,以下の3テーマについて実験的検討を行なった.第一に,人間-機械協調作業系における作業者の動特性自己整形特性に着目し,従来行なわれていなかった2次元3自由度,かつ視覚・操作運動覚併用の力外乱抑制作業について検討した.作業者から見た操作対象の動特性を変えるよう制御系を設定し,これに対する作業者の動特性自己整形特性を解析した.これにより,1自由度の場合と同様に,自己整形のしやすさと作業性能に相関があり,操作対象の特性設定の指針となることが分かった.第二に,操作性を左右する重要な特性として,作業対象の動特性変化が作業者に伝わる度合を示す対象変化感度関数の効果について検討した.例題としてビーム上を並進する振子系の安定化をとりあげ,作業性能を向上させる特性設定について調べた.その結果,対象変化感度と視覚情報を周波数領域で使い分けるように制御系を設計することによって,作業性能が高まることが明らかになった.第三に,自由度の高い随意作業における有効な支援法について検討した.例として,回転する対象平面上に閉曲線軌道を描くツール操作を支援する協調作業をとりあげ,視覚や力覚情報のフィードバックに加えて,運動学拘束を利用した補助手法も取り入れて作業性能の良否とその理由を分析した.その結果,作業フェースや条件によってそれぞれの効果が異なり,トレードオフが存在することが明らかになった.以上本研究によって,人間-機械協調作業系において作業者の主体的な作業を物理的に支援するための,制御系設計に有用な知見を得ることができた.
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