研究概要 |
電源の遠隔地化・偏在化,電力融通の広域連系化などにより,わが国の電力系統は大規模化する一方で,発電事業への独立系発電事業者の参入などにより増加する分散型電源や多様化する電力品質の要求などからますます複雑化する傾向にある.さらに,わが国における現在の電気事業を巡る状況は大きく変化し,電力市場の自由化・規制緩和に関わるコストダウンの一層の推進,電力託送に対応した電力流通網の信頼性確保など系統運用に課せられる課題はますます重大となっている.こうした背景の下で,本研究では,系統規模の拡大と電力市場開放にともなう系統の不確定要因に起因する複雑な系統状態変化に対して,広域での系統監視情報の信頼度を階層的に評価しながら有効に活用することができる自律分散型系統安定化システムを構築することを目的とした. 本研究で構築された電力情報の信頼度により階層化されたフィードバック構造を有する制御系に基づくPSSにより,従来一機無限大系統に基づいて設計されていたPSS制御に比してより安定度を向上する系統安定化制御を構築できた.本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.PMUなどを用いた広域電力系統情報を電力系統安定度の向上に有効に活用するごとを目的として,電力状態量,発電機および系統パラメータなどの諸情報の有する信頼度に応じた階層的な制御ループを構成する手法を提案した. 2.連系点での電圧,電流,周波数情報により,連系点に繋がる大規模電力系統の動的なインピーダンス変動を,システム同定手法を用いて同定する手法を提案した.そして,動的なインピーダンスを大規模電力系統モデルとして設計モデルに組み込むことで,長周期動揺ならびにローカル動揺に対応可能な発電機励磁制御系の設計手法を提案した. 3.上記の制御系の特性評価をMATLAB/SIMULINKを用いて模擬した電気学会WEST10機系統モデルにおけるシミュレーションを行うことで実施した.
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