研究概要 |
設置場所の気象条件や環境条件によって、送電線用碍子の絶縁特性は大きく変化する。本報告書においては、碍子の上面および下面の等価付着塩分量から海塩汚損が碍子の絶縁特性に与える影響を調査すると共に、台風等による短期的な急速汚損による絶縁特性の変化について調査したのでその結果を報告する。結果を要約すると以下の通りである。 (1)大気中に曝したプレパラートから求めた等価付着塩分量は,上面は通常0〜10(μg/cm^2)の範囲で変化し,下面はほぼ2(μg/cm^2)以下であった.1日単位の汚損では,碍子上面部分の絶縁特性の低下が下面に比べて顕著となり,短期的な絶縁特性の変化に対して支配的であると考える.また,上面および下面ともに季節的な差違は見られない. (2)降雨による雨洗効果は,碍子上面においては風向にかかわらず非常に顕著に現れているが,下面への影響は少ない.また、上面の等価付着塩分量は陸風に比べ海風の時が多く,碍子上面における汚損の主要因子が海風による海塩汚損であることを示している. (3)上面への等価付着塩分量が増加すると,1日間の漏洩抵抗の最低値が低下するが,下面に付着する塩分量の影響は少ない.上面の等価付着塩分量が30μg/cm^2を越えると,漏洩抵抗値がフラッシオーバの可能性がある10^6(Ω)以下に低下する危険性がある. 以上の結果より、碍子の漏洩抵抗を推定するためには、碍子表面の海塩汚損の蓄積状況、雨洗効果および湿度を考慮しなければならない。
|