研究概要 |
風力エネルギーは,クリーンで安全であるため地球環境にやさしい有効なエネルギー源であると期待されている。そこで,風エネルギーを有効に利用するために,大型の風力発電設備は主に沿岸に設置されることが多い。また最近では,小型風力発電装置を屋根やビルの屋上に設置する個人的使用例も増加し,風車翼破損による危害が懸念される。 この研究では,ビルの屋上や付近に民家のある場所でも小型風力発電装置を安全に利用するために,ウェーブレット変換を用いたオンライン状態診断システムの開発を目的としている。以下にこの研究で検討した項目と結果を示す。 1.最適なオンライン状態診断プログラム選択についての検討 まず初めに,実環境で生じる異常状態を風車翼の破損や着氷雪と想定した。そして,正常状態とアンバランス状態で計測した振動信号をウェーブレット変換による信号解析で特徴抽出し,正常状態と異常状態を判別するための各種の方法を提案した。その中から,ウェーブレット変換後,ウェーブレット係数の絶対値と平均値を取求めて正規化し,正常と異常状態のユークリッドノルムを計算することにより状態を判別する最適な方法を開発した。さらに状態診断の精度を上げるため,振動信号だけでなく風車翼の風切り音信号の両方を用いた診断法についても検討した。 2.計測データ送信システムによる簡易状態診断装置の検討 この研究では,風車の設置場所(ビルの屋上や山間部など)から離れた場所で状態診断をモニタリングするので,風車の振動信号と音信号を送信しコンピュータ側で受信する必要がある。そこで,この計測データ送信システムをFM送受信器で構成し,ノートパソコンを用いた状態診断装置を構築した。また,1ボードマイコンと液晶LCDを用いた簡易診断装置もほぼ完成させた。 なお,これらの成果については,日本風力エネルギー協会誌と阿南工業高等専門学校研究紀要に発表した。
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