研究概要 |
コンピュータの小型化と高性能化が急速に進み、携帯電話,携帯端末,ノート型パーソナルコンピュータといった「モバイル」型情報端末の「ウェアラブル」化が急ピッチで進められている.ウェアラブル情報端末は,人体の形状と動作に着目した人体との一体化が大きな課題となる一方,外界とのデータのやり取りには無線技術の採用が不可欠である.このとき,無線部の人体への装着位置は,アンテナ放射特性の面からだけではなく,人体の形状や動きにマッチした箇所の同定及び人体における電磁吸収量,すなわちSAR(Specific Absorption Rate)の低減化も不可欠である.本研究では,ウェアラブル情報端末の無線アンテナ設計法の確立を目指して,まず,人体数値モデリングとその解析技術の開発を行ってきた.市販コンピュータ・マネキン・ソフトウェアQueteに新たなモジュールを独自で追加し,日本人の平均的体型データを読み込むことで任意姿勢の人体数値モデルの構成が可能となった.それを用いて,人体のアンテナ使用姿勢がリアルに模擬することができるようになり,これらのときのアンテナ放射特性とSAR特性をFDTD(Finite Difference Time Domain)法で数値解析を行った.その成果として,側頭部に装着される無線端末については,人体肩以下の部分のアンテナ及びSAR特性に対する影響を十分小さいことを定量的に示すことができた.また,ノート型PCやPDA側面に装着されるアンテナについては,その放射パターンが人体方向へ最大20dB,キーボード上に置いた両手で斜め上方向へ約10dBほどそれぞれ減衰すること,ピークSARは,キーボードの入力時にアンテナ側の手に生じるが,入力作業を行わないときにはアンテナ側の胸にシフトされ,いずれも安全指針レベルを超えないこと,などが解明できた.さらに,こういう種類のアンテナに対しては,手がアンテナ特性とSAR両方に対して与える影響が大きく,人体動作の干渉を受けやすいこと,その代わりに胴体部装着時のアンテナは人体動作の干渉を受けにくく,安定した放射特性が得られることを明らかにできた.本研究の成果は,ウェアラブル情報端末の無線アンテナの設計指針を与えるものであり,IEEE(米国電気電子学会)論文誌,電子情報通信学会英文論文誌などに掲載され,または掲載予定である.
|