研究概要 |
情報化社会の進展に伴い,出版,放送,広告,教育等の広範な分野においてその表現手段のディジタル化が着実に進行している。現在、ディジタルマルチメディアコンテンツの著作権保護が世界的な課題となっており、電子透かしはこの問題を解決する主要な技術のひとつとみられている。なかでも、アニメーション画像は、独自のコンテンツが希薄であるといわれているわが国において、例外的に世界市場を席巻するコンテンツであり、その知的所有権の保護はいうまでもなく非常に重要な課題である。本研究課題は、このようなアニメーションを特に対象とした電子透かし手法の研究と開発を目的としている。本研究目的を達成するため、平成15年度には、アニメーション画像が一般的にカラー画像であることに着目し、カラー画像に適した電子透かしの提案を行った。提案手法は、画像の各画素が有する輝度情報と色情報をベクトルととらえ、このベクトルの絶対値と位相成分に埋め込みを行うことで、従来よりも、埋め込み情報量が多く、さらに各種改変に対しても耐性が強い方式である。具体的には、JPEG圧縮や輝度、色差成分の変更を行っても埋め込み情報を正しく抽出できる。なお、平成17年度にはこの方式にさらに改良を加え、埋め込み可能な情報量を増加させるとともにJPEG圧縮に対する耐性を強化することに成功した。平成16年度には、アニメーション画像を含む動画像方式一般に対して有効な電子透かし法の開発を行った。動画像コンテンツの場合、静止画像コンテンツに対して考えられている改ざん行為のほかに動画像独特の改ざん行為を考慮する必要がある。提案、開発した時空間画像埋め込み方式は、動画像に対しても高速に埋め込み処理を行うことが可能であり、また、動画像を構成するフレームの一部が抜き取られたりしても、埋め込み情報を正しく抽出できるという特徴を有している。さらに、これらの動画像をビデオカメラ等で撮影した場合、微小な回転変形が加わることが考えられるが、回転変形が加えられてもその回転角度を正しく推定し、透かしの読み取りを可能にする技術の開発を行っている。平成17年度には、アニメーション画像の輪郭部分に透かしを埋め込む技術の開発と、それに関連して、文字フォントへの電子透かし埋め込み技術についても開発・研究を行った。
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