研究概要 |
本研究では1Gb/s超屋内無線LAN構築を目的に電波伝搬,通信方式の両分野から検討を行い,以下の実績を得た。 1.屋内無線LAN環境伝搬特性の測定とシミュレータの検討 無線LAN環境伝搬特性の測定を既設チャネルサウンダに追加した到来方向測定機能と共に実施し,微細な電波伝搬特性と遅延波到来方向データを取得した。その結果,金属製建具を原因とする正規反射による遅延波と壁,家具などからの多くの弱い散乱波が観測された。また測定結果に基づく屋内無線LAN環境シミュレータの構築を進め,MIMO多重化による伝送速度向上を静的環境において確認できた。 2.ギガビット伝送方式を実現する変復調方式の検討 伝送品質推定法としてビタビ復号メトリック情報に基づく高精度かつ簡易な推定法を提案し、計算機シミュレーションにより有効性を確認した。この推定法による適応伝送速度通信方式として変調方式と周波数ダイバーシチブランチ数を変化させる2方式の検討を進めた。その結果,前者は所定の伝送品質で高い平均伝送速度を実現できたが,システム構成が複雑となった。これに対し,後者は性能的には劣るが,大幅なシステム簡略化を達成できた。 次に多重波遅延時間差推定法として同相チャンネル成分ひずみ検出による高精度かつ簡易な推定法を提案検討し、これに基づくガードインターバル(GI)適応可変OFDM伝送方式を検討し,提案方式がGI長固定の従来方式に比べ、高い伝送品質と高い伝送効率を同時に実現できることが明らかとなった。 更に,OFDMサブキャリア間の直交性を利用したMIMO-OFDM伝送方式を提案検討した。その結果,提案方式は従来の時空間符号化型と比べ、周波数利用効率が若干劣るが、同程度の伝送品質を達成できた。提案システムは伝送路推定や受信側の複雑な信号処理が不要なため,システムの複雑さと消費電力を大幅に減少できることが期待される。
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