研究概要 |
本研究では,渋滞解析を主な目的とした道路交通シミュレータMITRAMをファジィ推論を導入して構築し,4つの問題について,シミュレーション解析を行った. まずMITRAMの構築において内部の追従運転モデル,右折判断モデル,信号判断モデルについて,交通工学の理論値および実測値に基づいて検証を行い,妥当な結果を得た.また多数の車両の車群を形成したとき,一般の交通流の特性を有することを確認した. つづいて,以下のMITRAMの適用研究を行った. 1.実際の市街地での感知器データをMITRAMへそのまま取り込みシミュレーションが行えるようにするため,交差点ネットワークモデルを構築した.MITRAMへこのモデルを導入し高知市市街地の41交差点からなる比較的広域を対象としたシミュレーションを行い,精度のよい交通現象の再現が可能なことを確認した.またオフピークによる交通需要の平坦化が渋滞軽減に効果的なことを定量的に検証した. 2.MITRAMによる各車両の走行データから窒素酸化物(NOx),および二酸化炭素(CO_2)の排出量を推定する機能をMITRAMにもたせ,調布市市街地における道路交通シミュレーションにより市街地各地でのそれぞれの排出量を算出した.この機能により,信号制御と排出量の関係等が可能となった. 3.市街地にある鉄道踏切が道路交通を阻害して渋滞を引き起こすことが問題となっているが,その1つの対策として踏切の信号機化がある.京浜急行蒲田駅付近の第一京浜国道の踏切を対象にMITRAMによりシミュレーション解析したところ,信号機化により60%程度交通容量が増加し,渋滞解消に非常に効果があることが分かった. 4.MITRAM上の車両に経路選択の機能を付加し,交通情報を提供することにより,どの程度渋滞解消に有効か,またそれによって別の箇所が混雑するかシミュレーション解析を行った.シミュレーションの結果,交通情報が交通流にかなり影響を与え,渋滞緩和に有効であるが,一方で周辺道路への混雑度の波及があることが把握できた.
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