研究概要 |
既考案の不等間隔標本化定理に基づくCT画像処理法は,高速採取投影データにも即適用でき,何の補間も用いず簡便な処理で高精度が実現できる反面,投影データ採取ノイズの影響を受けやすい,時間がかかるという欠点を有していた.本研究の目的は,ソフト・ハードの両側面からこれらの難点を克服し提案手法の確立を図ると共に,その性能を,高速DSPボード実装PCを用いて試験し,高速高精度な軟組織用X線当該システム開発の可能性を評価・検証することにある.そのため,当初の研究計画に準ずる形で研究を進め,以下の成果を得た. (1)投影データ採取ノイズの高域レベルに対して有意な空間周波数情報の自動推定法の開発により,既考案手法に比べ,ノイズが混入しない場合の精度劣化を0.5dB以下に抑え,また混入する場合には約6dB〜10dB高精度で,かつ耐ノイズ感度も従来法で最も高精度な2D-FT法と同等以上に改善できた. (2)(1)の手法は高速化にも有用で,再構成時間を既考案手法の26%に低減できたが,従来の2D-FT法に比べ約3割方余計に時間を要している.しかし,当手法は当ノイズの増加につれ効力を発揮するので,実条件下では後者を上回る計算時間で働くと考えられる. (3)浮動少数点型DSPボード実装の場合には,精度の劣化なしに計算時間を64%に,また固定小数点型ボード実装の場合には,約10dBの精度劣化で,計算時間を38%に,それぞれ低減できた.しかし,不等間隔データの2D-IDFTに伴う膨大な容量の三角関数テーブル蓄積回避のため,先に提案の三角関数の逐次処理による高速化法を用いが、これによりDSPの持つ高速パイプライン処理が阻害され,期待したほどには効果が上がらなかった. (4)逐次並列処理に基づく画像再構成アルゴリズムの開発により,精度を劣化させずに,投影データ採取後,概ね使用PCの台数分の1の再構成時間で,逐次再構成画像を観察できることを数値実験的に確認した.
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