研究概要 |
本研究では,高齢化やALSをはじめとする重度の障害により全身の筋力が低下し,自律的に首を保持できない状態の人を対象として,首を保持しながら,使用者の意思に応じて首の運動を支援する首サポータの開発を行った。この首サポータは,全身の筋力が麻痺する障害をもつ人の動作を支援するものであるが,使用する人によって障害の程度は異なり,また同じ人であっても,障害の状態は常に変化する。そのため,適切な支援動作を実現するためには,使用者の状態や機能を学習し,その状態・機能に見合ったサポートを適応的に行うことが必要となる。言い換えれば,使用者が機器(装置)に合わせるのではなく,適応学習機能を機器に備えることで,機器が使用者に合わせることが可能となる。本研究で開発した適応学習機能を有する首サポータは,以下のような特徴を有している。 1.首サポータの制御には,位置制御ベース型のインピーダンス制御を用いている。 2.位置制御には,信頼性の高いPID制御をベースとし,その制御パラメータを階層型ニューラルネットワークの一種である小脳演算モデル(CMAC)を用いて調整する適応学習型のPID制御を用いている。 3.柔軟な空気膜構造体(風船)を用いたセンサーアクチュエータ系を提案し,それを用いて首サポータを実現している。空気膜構造体を用いたことで,使用者に優しく,また安全性を確保することができる。 この適応学習機能を備えたシステムは,その対象が首サポータに限定されるものではなく,褥創防止,寝返り補助などの福祉支援機器,さらには機能回復を支援するリハビリテーションなどにも応用可能であり,今後,幅広くその実用化に向けた研究開発を行う予定である。
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