研究概要 |
非線形システムに対する適応制御系の多くは,基本的には状態フィードバックを基にしたものであり,状態が検出できない場合には,非線形オブザーバにより状態を推定する機構を持った非常に複雑な構造を持ったものであった.このようなことから,本研究では,不確かな多変数非線形系に対するロバスト適応制御系を構造簡素な出力フィードバックを用いて実現するための総合的な設計法を確立することを目的に研究を行った.特に,非線形システムのフィードバック受動性に基づくオブザーバを用いない適応出力フィードバック制御系設計法に関して,並列フィードフォワード補償を併用した設計法およびバックステッピングに基づく設計法の両面から検討し,多変数非線形系に対するロバスト適応制御系設計法に関する基礎的研究を行った.具体的には,1)出力フィードバックに基づく多変数非線形ロバスト適応制御計設計法に関する理論的検討,2)非線形並列フィードフォワード補償器(PFC)を併用した設計法に関する基礎研究および3)離散時間非線形システムに対する出力フィードバック形式適応制御系設計法に関する検討を行った.1)のロバスト適応制御系設計や2)の非線形並列フィードフォワード補償器(PFC)を併用した設計法では,これまでにない新しい制御系設計法の提案を行い数値シミュレーションにより有効性の検証も行った.さらに,これまでの提案手法の一部において実験的にその有効性の検討を研究室で購入した非線形特性を有する磁気浮上実験装置,および,研究室所有の3タンクプロセス系実験装置により行った. なお,上記の成果の一部は,いくつかの論文誌に掲載され,また,国際会議ですでに発表または発表予定である.
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