| 研究概要 |
安静閉眼時背景脳波は,臨床において最も基本的な脳波であり,専門的訓練を受けた脳波判読医(判読医)の経験に基づいて判読されている.望ましい判読報告書の記述は,その報告書を読んだ医師が,原脳波時系列の特徴をすべて頭の中に想像できるような内容を有していることである.このような視点からみた場合,判読報告書の表現が十分な表現であるか否かを評価することや,判読報告書に記載された内容から原脳波時系列と同じ特徴をもつ時系列が想像できるか否かを検証することは重要である.
本研究では,判読医による判読所見を反映した時系列を発生する高精度脳波モデルを構成することが最終目的である.最初に,マルコフ過程振幅正弦波脳波モデルを用いて,判読医が捉えている背景脳波の特徴とモデルパラメータとの対応を明確にした脳波モデル構成を行った.背景脳波の特徴としては,徐波の周波数変動特性,優位律動の振幅変動特性(いわゆるwaxing and waning)とOrganizationに関して,モデルパラメータとの関係式を求めた.次に,これらの関係式を用いることによって,脳波モデルを用いた背景脳波の自動判読法を提案した.ここで,トレンドアーチファクト(雑音)による誤判定を避けるために,トレンドアーチファクトモデルを導入した.本方法を実脳波データに適用した結果,脳波モデルを用いない従来の自動判読法よりも判定精度が向上した.最後に,自動判読法を逆に利用することによって,判読所見を反映した脳波モデル構成法を提案した.提案法を7名の被検者の判読報告書に適用し,構成したモデルの時系列を判読医が視察した結果,モデル時系列には判読報告書に記載されている内容と同じ特徴をもつという良好な評価がなされた.
本研究の成果として,生体医工学の論文誌に1つ掲載され,現在1つの論文を投稿中である.さらに,1つの論文を欧文誌へ投稿予定である.
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