研究概要 |
老朽化した鉄筋コンクリート構造物を合理的に維持管理するには,調査・診断技術を確立することが不可欠である。そのために、約50年間供用されてきたRC道路橋2橋に対して実施した打撃系非破壊診断試験と解体桁の破壊試験結果の関連性を詳細に検討した。さらに、RC構造物の将来の耐荷性能を予測する手法を開発するための基礎的検討を行った。当該研究の成果を列挙すると以下のようになる。 1)下面に増厚補強されている橋梁の場合,打音法による変状部の検出精度は,完全に剥離している部位については明確に検出可能であり推定深さもほぼ一致するが,増厚補強が健全な箇所では補強部材の接合具合や打撃強度の状況によっては異常と判定する場合が見られた.よって現段階の打音法は,コンクリート内部の空洞を見逃すことはないが,増厚補強など異種材料が混在する試験対象に対しては,打音データに含まれるその影響を把握する必要があると考えられる. 2)長年月供用されたコンクリート部材のヤング率は,設計時の圧縮強度との関係式による一般値よりも小さくなる可能性が高く,特に圧縮強度が小さい部材ほどその傾向が強いことが認められた.また,シュミットハンマー試験による反発硬度から圧縮強度を推定する場合には,適切な材齢係数を用いた補正を行えば精度を向上できることがわかった. 3)損傷力学を適用したRC構造物の劣化・損傷解析プログラムを開発し、老朽化した構造物の耐荷性能評価のベースとなる解析ソフトを構築することができた。本ソフトを用いれば、塩害による鉄筋腐食とそれにともなう将来の耐力低下を予測可能であることを確認した。 4)疲労損傷させたコンクリート供試体に対して打撃試験を実施し,疲労損傷と打撃入力に対する加速度応答の関連性について複関数分類学習ニューラルネットワークを適用することで,加速度応答の変動特性から損傷度の進展を評価可能であることを確認した。
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