研究概要 |
断面引張域のコンクリートを硬質ウレタンと置き換えた「硬質ウレタンを充填した鋼コンクリート合成部材」は,自重の軽減が可能で,低桁高を要求される合成床版橋に効果的に使用されている。しかし,桁高を低くすると,振動しやすく使用性に劣る橋梁になる。本研究の前段(平成15年度)では,「硬質ウレタンを充填した合成床版橋(2橋)」と「コンクリートを全断面に充填した合成床版橋(1橋)」を対象として現場振動実験を行い、実橋の振動に及ぼす硬質ウレタン充填の効果を調べた。その結果,硬質ウレタンを充填することにより減衰定数が50%以上大きくなることを確認した。 次に,サンドイッチ状に充填する硬質ウレタンが鋼板に接着し,鉄道橋の鋼板から発生する構造音を抑制する効果が期待できると考え,平成16年度〜17年度は硬質ウレタンを添加した鋼板の振動性状を実験的に検証した。すなわち,硬質ウレタン厚を変化させた「硬質ウレタンを添加した鋼板」試験体に対して,試験体に衝撃力を与えて振動させる衝撃加振実験と、振動台上に試験体を設置して試験体の応答を調べる実験の2種類の振動実験により硬質ウレタンの効果を調べた。 衝撃加振による振動実験では、鋼板の板厚3mm,硬質ウレタン厚が150mmのケースで,ゴルフボールを衝突させた時(高い周波数領域の振動)には約4倍の減衰定数となり,ソフトボールを衝突させた時(低い周波数領域の振動)でも約2倍の減衰定数が得られた。それに対して、振動台に試験体をセットして加振させた振動実験では,硬質ウレタンを添加したことにより却って鋼板の応答加速度が大きくなる結果となり,地震時などにはウレタンが悪影響を及ぼす可能性があることも確認された。
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