研究概要 |
本研究では新規開発した現場せん断試験装置を用いて斜面内に潜在する不連続面に沿った土のせん断強度特性を調べた。得られた知見は以下のとおりである。 (1)関門層群堆積岩からなる切土斜面の崩壊事例を綿密に調査し,崩壊・非崩壊を分ける要因として強風化・黒色薄層土・褶曲構造などの他に断層面の存在があることを指摘した。 (2)垂直応力やせん断速度などの影響を検討するため,試験条件を制御しやすい実験室内において0〜50°の範囲で任意の傾斜角を設定できる室内模型地盤とその上に設置する超簡易現場せん断試験装置を試作した。本装置では模型地盤容器の取り外しが可能であり,不連続面を壊すことなく不撹乱試料を採取することができる。 (3)平成16年度に山口県内で発生した斜面崩壊の現地調査を行い,従来の指摘のとおり斜面内の不連続面で表層崩壊が発生していたことを明らかにした。そして,実際の崩土およびまさ土を用いて超簡易現場せん断試験を実施し,その結果を一面せん断試験結果と比較し,本試験のせん断強度の信頼度ならびに適用限界を検討した。また,傾斜模型地盤において実際の崩壊斜面と同じ傾斜角を付加した状態でのせん断挙動および強度特性を検討した。主な結論として,超簡易現場せん断試験の結果の解釈では土試料の原粒度に対して注意を要することが明らかになった。 (4)厚さ1〜1.5mの表層崩壊に関する素因として不連続面の他に樹木根系を取り上げた。現地で採取した表層土の根系の分布を調べ,その含根率を基に根系を混入させた一面せん断試験を実施した。また,根系の代替材として麻紐をまさ土に混入した試料も使用した。試験結果に基づき根系の補強メカニズムを検討した。主な結論として,根系の補強効果は内部摩擦角の増加よりもむしろ粘着力の増加に起因すること,低い拘束圧下にある方が発揮されやすいことが明らかになった。
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