研究概要 |
本研究では,流体中に含まれる固体物質(以下,粒子)の運動と輸送現象を高い精度で再現する数値解析手法を構築し,現象解明と工学的な評価に役立てる手法を得ることを目的として,平成15年度と16年度の2年にわたり基礎実験を実施するとともに数値解法に関する研究を実施した. 平成15年度には,粒子を含んだ非圧縮性流体から構成される場全体を連続体と考えて,これに対する数学モデルを導出した.さらに,上記のような数値解析的な検討を進める一方で,解法の検証を行うための基礎実験を実施した,粒子の初期移動過程を明らかにするための「2次元ダクト模型」と,大規模な自由水面の変形を伴う流れにおける粒子の輸送過程を把握するための「可変勾配水槽」を作成した.これらの基礎実験結果の一部を数値計算結果と比較することにより,解法の部分的な検証を行った. 平成16年度には,15年度に開発した2次元場における固気液混相場に対する統一的解法(MICS)を3次元化するとともに,大規模な問題へ対応できるように領域分割法に基づく並列計算法を導入した.大規模SMPクラスタを用いて計算速度の向上を検討した結果,複数のCPUを用いることによる効果が確認された.解析モデルの3次元化に際しては,サブセル法を用いた固体領域の体積評価法や,複数の固定障害物(ボックス)が存在する中での圧力計算法など,多くの新しい工夫を加えている.3次元MICSの有効性を検証するため,造波装置を備えた小型の水槽を作成し,基礎実験を行った.ステップ上部に直径40mmの大粒径アクリル球体を9個設置して,波動流れによりそれらが輸送される状況を計測した.3次元MICSを上記の基礎実験に適用し,現象が妥当に計算されることが示された.
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