研究概要 |
高齢者や障がい者の交通需要の潜在化は,これらの人々の心身機能や経済状態等の個人特性に対して,バスや鉄道,タクシー等の交通手段の車両構造や運行システム等の交通環境の不整合がもたらすものである。本研究では,このような不整合に関して,バス,鉄道,タクシー等の公共交通の利用実態から,高齢者や障がい者がおかれている困難な状況を把握し,それぞれの地域に求められる交通が保持すべき機能を明らかにするとともに,求められる機能を達成するための今後の公共交通の運営方式について,具体的な対象地区として,秋田市北部地区の公共交通の現状を把握した後に,いくつかの代替案を作成した。 さらにこれらの代替案の実現可能性について,住民の選好意識を把握することで,人口密度が希薄で,既存の公共交通が成立が難しい地区における公共交通システムについて提案を行った。対象地区の交通状況として,バス利用者のおもな利用者は,通勤目的の成人,通学目的の小学生,通院目的の高齢者で占められ,全運行区間において乗客が4名以下の便が多く,また乗客が全くない便も少なくないことが明らかとなった。また,乗り換えの状況やバス利用者の意向調査から,病院への直通便が少なく,時間や費用に関して改善の余地があることが明らかとなった。このような状況から,具体的な代替案として,病院への直通路線を設定することと,日中の通勤通学,帰宅以外の時間帯において,小型バスまたはタクシーによる需要対応型交通システム(DRT)の導入について提案した。提案された新たな路線,DRTに対する住民の利用意向は高く,予約システムや巡回による所要時間の増加を最小限にすることで,導入可能性が高いことを明らかにすることができた。
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