研究概要 |
本研究では,近年最も急速に普及した『モバイル通信』を取上げ,これが生活行動パターン形成に与える影響を計量的に捉える分析手法を提案することを目的としている.研究の実施にあたっては,まず,三通論(交通論、流通論、情報通信論)のレビューと研究展望を行った.次に、本研究の準備研究として実施した大学生対象のモバイル生活行動調査(以下、SCAT1)分析結果をもとに,モバイル生活行動調査手法の開発における主要な検討課題を抽出した.併せて,モバイルマーケットを中心とした移動体通信機器の技術開発の現状と今後の見通しを把握し、本研究の全体フレームを確認した.この準備を整えた上で,本研究におけるメインテーマともいえるモバイル生活行動実態把握のための調査分析手法の開発では、具体的なSCAT2の調査設計及びその実施と基礎集計分析を行った.このSCAT2における調査対象は世帯単位を基本として,モバイル通信における世帯構成員間の相互依存性に着目した分析を行った.また,1日の予定行動の調整過程のモデル分析では,1日の中であらかじめ予定されていた活動の内容,時刻,時間,場所といった意思決定事項がモバイル通信による情報の受発信を通じてどのように決定していくかをモデル分析した.具体的には、ADデータと通信記録データをもとにデータマイニング手法を適用しながら,意思決定過程におけるルールの探索と検証を行った. これらの調査・分析結果より,モバイル通信利用の実態,およびモバイル通信の利用と生活行動や世帯内の帯同行動との関連が明らかになった.この10年間で普及したモバイル通信は,生活行動に深く関わり,様々な局面で様々な用途に用いられている.今後,より高速で大量のデータをやり取りすることが可能な第3世代携帯電話や無線LANなどの普及が進めば,これまでと違ったコミュニケーションを可能にすると考えられる.本研究の分析結果は,これらモバイル通信による生活行動の変化の方向性あるいはコミュニケーション活動のあり方を考える示唆を与えるものといえる.
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