研究概要 |
先ず,1980年以降我が国に建設された大空間構造の形状・力学的特性について,文献調査と設計者へのアンケート調査を行った。また,用いられた耐風設計手法についても調査した。次に,いくつかの代表的な空間構造を対象とし,それらに作用する定常空気力の特性の把握と動的荷重効果を考慮した合理的な風荷重評価手法について考察した。検討した課題は以下の通りである 1.円形平面をもつ陸屋根に作用する風圧のモデル化と構造骨組および外装材用風荷重評価への応用 2.球形ドームに作用する風圧のモデル化と風荷重評価への応用 3.エアロダイナミックデータベース,ニューラルネットワークおよび時刻歴シミュレーションを応用した外装材用風荷重評価システムの提案 4.翼型に似た断面をもつ曲面構造物の風荷重評価 特に,3.は球形ドームを対象とし,性能設計に対応できる新しい風荷重評価方法を提案したものである。その都度風洞実験を行うことなく,信頼性設計や疲労設計にも利用できる風荷重を比較的簡便に評価できる。今後,円筒形屋根も含め,幅広く曲面屋根を対象とした風荷重評価システムを構築する予定である。 最後に,大空間構造に作用する非定常空気力の特性について検討した。既往の研究成果をレビューし,振動依存風力(空力減衰)の特性を把握すると共にそれを考慮した場合の風応答解析上での課題を整理した。また,円筒形屋根を対象として強制振動実験の準備を行った。しかし,コンピュータ制御システムや強制振動装置のトラブルが発生し,それを解決するために多くの時間を要したため,非定常空気力に関しては,現在のところ纏まった成果を得るまでには至っていない。引き続き,研究を継続する予定である。
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