研究概要 |
本研究では,開発途上国において地震に強い安全な住環境づくりのため,中南米諸国の組積造建物に多用されている枠組組積造壁体の耐震性向上について検討を行った。以下に研究成果の概要を示す。 1.曲げ破壊先行型壁体の耐震性能 一定軸力下における水平加力実験の結果から,1)れんが壁体と周辺の鉄筋コンクリート(RC)造拘束柱の間に配筋される中国式の連結筋と,れんが壁体内に連続に配筋される水平補強筋は,ともに壁体の曲げ耐力の向上には有効ではないが,曲げ降伏後の変形性能の向上に有効であり,特に軸力が低い場合にその効果が顕著である,2)壁体の曲げ耐力は,RC造拘束柱の主筋を端部曲げ補強筋とみなせば,既往の曲げ耐力算定法で推定できることがわかった。 2.2方向水平力を受ける直交壁付き壁体の耐震性能 水平2方向の加力実験の結果から,1)無補強組積造壁体とれんが壁体内に補強筋がない枠組組積造壁体では,大変形時に壁体交差部において縦方向のひび割れ幅が大きくなるが,れんが壁体内に補強筋を有する場合はそれがかなり抑制される,2)RC造拘束柱の有無は最大耐力に影響を及ぼす,3)れんが壁体内に水平補強筋と中国式の連結筋を配筋することは,壁体の変形性能の向上に有効である,4)2方向載荷を受ける壁体は1方向載荷を受ける壁体よりも最大耐力が低い,5)一方,変形性能は2方向に載荷の場合が1方向の場合よりも若干高いか同程度であることがわかった。 3.水平補強筋が壁体のせん断強度と変形性状に及ぼす影響 一定軸力下における水平加力実験の結果から,1)水平補強筋の有無は壁体のせん断耐力に影響を及ぼす,2)水平補強筋のない試験体はせん断破壊により早期に限界変形に至ったが,水平補強筋を有する場合は変形性能がかなり改善される,3)しかしながら,水平補強筋の配筋量と最大耐力・変形性能の間には明確な相関はみられないなどの結果を得た。
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