研究概要 |
製鋼過程で発生する高炉スラグや火力発電所から発生する石炭灰(フライアッシュ)等の産業副産物をコンクリート混和材として利用する場合,著しい凝結遅延を招く場合がある。従来から,凝結促進剤として塩化カルシウムが使用されてきたが,現在,コンクリート構造物内の鉄筋腐食を誘発させるため使用できない状況にある。以上のことから,本研究の目的は,塩化物を含有しない凝結促進剤を開発することにある。実験の結果,凝結促進剤の主成分として硫酸アルミニウム(Al_2(SO_4)_2)と硝酸バリウム(Ba(NO_3)_2)を選定するに至った。高性能AE減水剤,増粘剤または混和材として産業副産物である高炉スラグ,フライアッシュを混合したコンクリートへの無塩化型凝結促進剤の適用性を検討し,流動保持性能と凝結促進性能をバランスよく発揮させるためのAl_2(SO_4)_2とBa(NO_3)_2の適正添加比率は1:1.5であることを見出した。コンクリートの練混ぜ直後において,無塩化型凝結促進剤添加による流動性低下は認められず,練混ぜ後1時間経過時における流動性低下を5〜10%程度に抑制しながら凝結時間を30〜40%短縮することができた。これは,現在一般的な凝結促進剤である亜硝酸カルシウムと比較して約15%の短縮となった。圧縮強度発現については,初期材齢から長期材齢にかけて強度低下は認められず,高炉スラグの場合は,材齢1日から28日間の各材齢において約20%以上の増加が認められた。また,凍結融解抵抗性については影響が認められなかったが,初期乾燥収縮量は若干増加する傾向にあり初期養生に対する注意が必要であることが明らかになった。さらに,産業副産物に含有する微量の重金属酸化物の内,CrO_3,PbO,ZnOがセメントの水和反応を遅延させる要因となることを明らかにし,これら重金属酸化物が凝結遅延を発生させる原因として,セメント水和物のケイ酸構造の鎖長分布に影響を及ぼすことを明らかにした。
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