研究概要 |
本研究では直流スパッタ法を用いて、Co-Ti-N薄膜を作製し、その後真空熱処理して、垂直異方性を持つCo-TiNナノコンポジット薄膜を作製した。またCo-TiNナノコンポジット薄膜に対してTiの含有量,Ptなど添加元素および膜厚さ等の膜構造,物性への影響について調べた.その結果,垂直磁気異方性の観点から薄膜中のTiとCoのモル比は2:1のとき最適であることがわかった.この条件下で作製した薄膜は垂直方向に最大の保磁力と残留磁化を示す.ただし,薄膜中Ti含有量が増加するとともに最適アニール温度も上がる.TiとCoのモル比は2:1のときの最適アニール温度は800℃である.垂直異方性の起源について以前から薄膜中のCo粒子は基板表面と垂直方向に数珠状に配列して,横方向にTiNで分断され,つまりCo粒子間の磁気相互作用は面内方向より垂直方向に強い.それによって垂直軸は磁化容易軸になることがわかった.これはCo粒子の集合の形状異方性と考えることができる. 磁性金属と窒化物の層状構造の磁気異方性についての研究も行った.具体的に,Co(Pt)/AlNの層状構造を作成した.このような構造は作成したままでは1軸面内異方性を示すが,400℃以上でアニールすると1軸垂直異方性を示すことがわかった.構造解析の結果,作成したままの膜では,fcc-Co(Pt)と六方晶のAlNと強い111Co(Pt)//001AlN//基板表面という配向性を示し,さらにCo(Pt)-AlN界面に整合関係が存在する.それによって,アニール過程中のアウトガスや熱膨張に由来するCo(Pt)層の変形は,特に面内方向では,AlN層の拘束により制限され,金属層に応力を導入される.この応力が垂直磁気異方性を誘発したと解明した.
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