研究概要 |
本研究においては、導電性高分子のエネルギー関連材料としての応用を目的として、(1)燃料電池電極触媒への応用、(2)耐放射線材料への応用、(3)可視光で作動する光触媒への応用、(4)腐食防止膜への応用、の四項目について平成15,16,17年度の3年間にわたって検討を行なった。得られた研究成果の概要は以下の通りである。 1.燃料電池用電極触媒への応用 高性能な直接型メタノール燃料電池の開発を目的として、白金修飾ポリアニリン電極のアノードおよびカソード反応に対する触媒活性を検討した。白金/ポリアニリン電極は、両極の反応に対して高い活性を示し、特に硫酸中で作製したポリアニリン電極が優れた性能を示した。白金使用量低減のための卑金属触媒の共担持についても検討した。アノードのメタノール酸化反応においてはスズが、カソードの酸素還元反応においては鉄が、白金/ポリアニリン電極に対して有用な助触媒であることを見出し、両極において白金使用量の大幅な低減が可能であることを明らかにした。 2.耐放射線材料への応用 導電性高分子の耐放射線材料としての機能評価を目的として、ポリアニリンに高い線量のガンマ線を照射すると、分子量はわずかに減少した。分子量の変化する速度は、既存の安定な材料であるポリスチレンよりも遅く、ポリアニリンは耐放射線材料として極めて有望であることを明らかにした。 3.可視光作動光触媒への応用 半導体高分子を光触媒とする高効率な二酸化炭素の固定化反応の開発を目的として、ポリメチルチオフェンを光触媒とし、フェノール存在下で可視光を照射すると、効率はそれ程高くはないが目的生成物であるサリチル酸が得られることを明らかにした。 4.腐食防止膜への応用 導電性高分子の持つ電気化学的防食機能と、通常の高分子の持つ表面保護機能を併せ持つ腐食防止膜の開発を目的として、ポリアニリン膜とトリアジンジチオールを有するアニリン誘導体の電解重合膜との複合膜の防食機能について検討し、この複合膜は極めて高い腐食防止機能を有することを見出した。
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