研究概要 |
本課題はマイクロ粒子配列体に極短い時間の通電を行い,金属粒子間の放電によって瞬間焼結を実現し,配列焼結体の高次機能の開発を目指す研究である。一例として,熱電マイクロデバイスへの応用が注目されているBi-Sb熱電材料系をモデル材料とした。粒径の揃ったBi-Sb単分散粒子配列体を焼結するには通電放電焼結法が可能であることは研究の初期段階で実証されているが、粒子の配列と焼結時の治具の熱および電気伝導特性の焼結体への影響について未知なことが多かった。そこで,瞬間放電焼結の際に用いる治具の加工性と熱伝導特性を考慮し,異なる治具を用いて作製した粒子配列体のマイクロ組織および特性への影響について比較検討を行った。配列方法はXY方向に微調整可能な固定具を採用し,粒子配列の精度をあげることができた。熱伝導率の異なる樹脂、黒鉛、BNを治具の材料としてBi-12at%Sb熱電単分散粒子の焼結体を作製した。配列焼結体についてはSEM観察を行い,融部の微細組織を比較した。また,熱電特性への影響については,金蒸着法によってリード電極を付与し,トランスポート測定装置を用いて評価を行った。 評価の結果よりから分ったことは,樹脂、黒鉛、BNはともにマイクロ粒子の瞬間焼結の治具として使用できる材料と確認することができた。しかし,黒鉛の治具で作製した焼結粒子の接合部は通電時の熱の影響によって均一組織の範囲が他の2種類の材料に比べて狭く、熱電特性も低い値を示した。接合強度も比較的に弱かった。3種類の治具のなかで,樹脂とBNはより瞬間放電焼結の治具に適している。また,標準のBi-Sbバルク試料に比べ,配列焼結体の比抵抗が高く,移動度も低めとなったが,熱電材料として使用可能な領域に分布している。以上のことから,治具の特性はマイクロ粒子配列焼結体の組織制御および焼結体の特性に影響を与える重要な要素であることが示唆された。
|