研究概要 |
メタノール燃料電池車の燃料タンクに利用可能な新しい高耐食性表面処理鋼板の開発を目的として,不純物であるH_2O,NaCl,およびHCOOHを含むメタノール中において,溶融めっき法で作製したSn-8%Zn合金めっき鋼板の腐食挙動と腐食機構を調べた.0.1-30%H_2Oを含むメタノール中もしくは,0.1-30%H_2O+0.1%NaCl含むメタノール中では,めっき鋼板は高い耐食性を示した.これらの溶液中でのめっき鋼板の腐食速度は,0.66μg・m^<-2>・s^<-1>以下の値を示した.しかし,0.1-30%H_2O+0.1%HCOOHを含むメタノール中では,わずかに腐食し,めっき鋼板の腐食速度は2.4〜3.5μg・m^<-2>・s^<-1>の値を示した.0.1-30%H_2O+0.1%NaClを含むメタノール中におけるアノード及びカソード分極曲線測定の結果,めっき鋼板の腐食電位はZnのそれとほぼ一致し,めっき鋼板の孔食電位はSnのそれとほぼ一致した.0.1%H_2O+0.1%NaClを含むメタノール中における浸漬腐食試験後のめっき鋼板の表面皮膜についてオージェ電子分光分析(AES)とX線光電子分光分析(XPS)を行った結果,多量のZnの酸化物と水酸化物と極微量のSnの酸化物と水酸化物から皮膜が構成されていることが分かった.したがって,H_2OやNaClを含むメタノール中での溶融めっき法で作製したSn-8%Zn合金めっき鋼板の腐食機構は,めっき相中のZn相の選択溶解によると推察される.
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