研究概要 |
実用円管材に任意のひずみ経路もしくは応力経路を負荷できるCNCサーボ制御二軸応力試験機を用いて,線形応力経路におけるA5154-H112押出し円管材の塑性変形特性および成形限界を明らかにした.その結果,以下の知見を得た. 1)等塑性仕事面はおおむね相似形状を保ち,応力比σ_φ:σ_θ=3:4〜20:23方向に張り出した形状となった.Yld2000による降伏曲面は等塑性仕事面の形状をよく捉えており,特にε^p_O=0.002,0.01,0.025における等塑性仕事面とほぼ一致した.Hosfordによる降伏曲面と等塑性仕事面との一致の度合いは,ε^p_O【less than or equal】0.1の応力比1:1〜3:4においてYld2000に比べてやや劣る. 2)線形応力経路のもとでは,塑性ひずみ増分ベクトルの方向はそれぞれの応力比ごとにほぼ一定方向を保ち,HosfordもしくはYld2000の降伏条件式による計算値とおおむねよい一致を示した. 3)HosfordおよびYld2000の降伏条件式が塑性ポテンシャルに一致すると仮定して,線形応力経路における真応力-対数塑性ひずみ曲線を計算した.その結果,応力比にかかわらず,両降伏条件式による計算値の差異は全般的に小さいこと,それらの計算値により実験値の傾向がほぼ再現されることを立証した. 4)成形限界をひずみ空間で表示すると,成形限界線(FLC)はひずみ経路に依存して大きく変化するが,成形限界応力を応力空間にプロットすれば,それらは一本の曲線上(FLSC)に集中し,ひずみ経路依存性が消失することが明らかとなった. 5)FLSC上の同一の応力点に到達するまでになされた累積塑性仕事は,応力経路によらずほぼ同じであった.これより,FLSCがひずみ経路に依存しないことは,応力-ひずみ曲線の勾配が減少することに起因する見かけ上の結果ではないことが判明した.
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