研究概要 |
Fe-10Cr-10Mo-2C-8P(A合金),Fe-16Cr-30Mo-4C-2B(B合金)およびFe-16Cr-30Mo-2C-1B-7P(C合金)の溶射用合金粉末を作製し,プラズマ溶射(APS)および高速フレーム溶射(HVOF)による大気溶射で皮膜を作製した.HVOF溶射ではすべての合金で完全な非晶質皮膜が得られた.一方APS溶射では,BおよびC合金のみ完全な非晶質皮膜が得られた.HVOF皮膜の1規定の塩酸水溶液中における陽極分極曲線から,A合金の電流密度はBおよびC合金と同程度で耐食性はほとんど同じであると評価された.また塩酸水溶液中におけるAPS皮膜の浸漬腐食試験では,A合金はSUS316Lバルク材と同程度の耐食性を示した.一方,BおよびC合金の侵食度はA合金の1/100程度の優れた耐食性を示した.皮膜を焼き戻すとA合金は、フェライト、M_<23>C_6およびM_7C_3炭化物およびM_3Pリン化物、B合金は、フェライトおよびM_<23>(C, B)_6およびM_7(C, B)_3炭ホウ化物,C合金は、フェライト、M_<23>(C, B)_6およびM_7(C, B)_3炭ホウ化物およびM_3Pリン化物からなる皮膜となることがわかった。また,B合金のHVOF皮膜を加熱して結晶化が終了した時,10nm程度の微細粒組織が形成されていることが透過電顕観察から明らかとなった。さらに,合金CのHVOF皮膜を948Kで100hr保持しても,ナノ組織を維持していることが示された。焼き戻しした皮膜は溶射したままの皮膜と比較して、耐塩酸性は劣化していた。しかし,塩酸水溶液中のニッケル基自溶合金皮膜の陽極分極曲線と比較すると腐食電位は貴であり、不動態域の電流密度は低い値を示し、自溶合金皮膜よりも耐塩酸性に優れた皮膜であることが分かった。
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