研究分担者 |
内田 仁 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30047633)
花木 聡 兵庫県立大学, 工学研究科, 助手 (20336829)
小西 啓之 日本原子力研究開発機構, 関西研究所, 副主任研究員 (50354981)
水木 純一郎 日本原子力研究開発機構, 関西研究所, 放射光化学研究センター長 (90354977)
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研究概要 |
本研究では,鉄鋼材料の腐食劣化機構を解明するために,SPring-8やPhoton Factoryなど大型放射光施設を用いた腐食劣化のその場観察および腐食生成物についてのナノメートルオーダーの微細構造解析を行った.具体的には,水溶液に覆われた鉄鋼材料表面におけるFeイオンと鋼中に添加されているその他の金属イオンおよび腐食環境から供給される硫酸イオンや塩化物イオンとの反応,さらには各腐食段階における反応生成物(さび層)の構造を,X線回折(X-ray Diffraction; XRD)やX線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure; XAFS)測定により解析した. X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure; XAFS)測定の結果,(1)合金元素としてのCrが,さび層の保護性を担うゲーサイト(α-FeOOH)に取り込まれ,超微細Crゲーサイトを生成すること,(2)塩分飛来環境で耐食性向上効果を期待され合金元素として添加されるNiは,さび層中のアカガナイト(β-FeOOH)あるいはスピネル酸化物の特定のサイトに存在し,塩化物イオンの腐食加速効果を低減すること,(3)さび層を構成する各種Fe酸化物の存在量比と合金元素および腐食環境条件の関係,(4)環境中に存在する塩化物イオンがさび層の構造に及ぼす影響,などを明らかにした. また,鉄鋼材料の大気腐食さび層の形成初期過程をその場観察を試みた結果,白色X線を利用した回折法を用いることが,連続的に変化するさび構造を迅速にとらえる点で有利であることがわかった.この方法により,初期に生成するさび物質の構造が共存するイオン種と関連することや,乾湿繰り返しに伴うさびの相変化などが明らかになった. これらのことは,合金元素や環境因子が腐食生成物であるさび層の構造と防食性さらには腐食反応に大きな影響を与えることを示している.
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