研究概要 |
宇宙空間で安全に使用できる可能性を持つ日本独自の宇宙GHTA (Gas Hollow Tungsten Arc)溶接法を1993年に提案し,その実用化を目指した研究開発を実施している,本研究の実施によって,宇宙環境圧力10^<-5>Paで安全,確実にアークを起動できる技術とアルミニウム合金溶融金属表面の酸化膜を除去する技術を完成させた.その結果,宇宙GHTA溶接技術の実用化に必要な要素技術を確立できた. 1.直流高電圧起動方式と接触起動方式によるアーク起動現象 従来の高周波高電圧起動方式のアーク起動は,宇宙ステーション搭載機器に電磁ノイズ障害を与えるので宇宙ステーション近傍では使用できない.そこで,宇宙ステーション軌道圧力10^<-5>Paで直流高電圧起動方式と接触起動方式によるアーク起動実験を実施して,両方式が宇宙適用可能なことやアルミニウム合金のアーク起動現象の特徴を明らかにした. 2.直流高電圧起動方式と接触起動方式の各種起動パラメータがアーク起動現象に及ぼす影響 直流高電圧起動方式では起動電圧,起動電流が,また接触起動方式では電極の引上げ速度,引上げ高さなどのアーク起動パラメータがアーク起動現象に及ぼす影響を調査した,そして,両起動方式ともに宇宙適用可能であるが,直流高電圧起動方式よりも接触起動方式が性能,重量,安全性で優れることを明らかにした. 3.宇宙材料アルミニウム合金の溶接現象および溶融金属表面の酸化膜除去機構の解明 アルミニウム合金の宇宙GHTA溶接現象を明らかにするために交流,直流および直流パルス溶接電源を使用した溶接実験を実施して,それらの溶接現象の特徴を明らかにした,また,直流パルス溶接電源を使用するとパルス衝撃圧力によってアルミニウム合金溶融金属表面の酸化膜を除去できることを発見し,高速度ビデオカメラによる溶接現象の詳細観察によって,その酸化膜除去機構を解明した.最後に,溶加ワイヤを供給してアルミニウム合金の突合せ溶接継手を製作し,継手性能評価を行って突合せ溶接継手が充分な強度を有することを明らかにした.
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