研究概要 |
これまでの研究過程の中で金属合金材料が室温・大気圧下で水素と接触させた際に水素を吸収して粉末化する現象を発現した。 各種合金が水素を吸収して粉末化できれば,粉砕に要する機械的エネルギーは皆無であり,極めて省エネ的粉末製造となるが,水素吸収量が比較的大きく,合金表面が清浄などの条件を満たす材料は限られたものと考えられる。 本研究は,上述した合金材料の探索を目的として高融点金属材料であるNb系合金および希土類金属であるNd系合金について行ったものである。 Nb合金は,Nb-Zr-Fe三元合金,Nd系合金はNiおよびFe合金を選択した。各種組成の合金作製はアーク溶解法を用い,室温・大気圧下で水素と接触させて粉末化を試みた。得られた合金粉末は熱分析による水素吸収・放出やその量,温度との関係を測定し,物理特性として,SEMによる形態観察、比表面積測定、水素中で磨砕した際の粒子径の変化などについて調査した。 以下に,得られた研究成果を示す。 1)Nb-Zr-Fe合金の場合,各種組成のNb, Zr, Fe三元合金(35種類)を作製して水素による粉化する領域を探索した結果,極めて広範囲の約70%組成域が粉化することが判明した。最も粉化容易な合金組成は,Nb/Zrの比が1/1でFeの含有量が15〜30at%であった。粉末の形状はフレーク状であり,サイズは5〜200μμm程度であった。粒子の表面に多数の微細な割れが確認され,水素濃度は1.8mass%と極めて高く,熱分析結果より473Kまで安定に水素を貯蔵することが判明した。 2)Nd-Ni合金では,Nd-Ni合金のNi濃度が10,20,40,60at%の合金をアーク溶解法により作製し,水素と接触させた結果,本組成内の合金は粉化することが判明した。なお,これら合金は,水素と接触させるため前処置として約40vol%H_2-Ar中で4〜5secアーク溶解することにより水素による粉化が容易になった。10at%Ni-Nd合金粉末の水素含有量は1.8mass%であった。 Nd-Ni合金は,Nb-ZrFe系合金と比較して粉末化が極めて緩慢であった。この粉末化の差異は合金組成および表面清浄度とも関連がありNd合金は極めて酸化され易いためと考えられる。 合金の粉化時には,水素吸収および粉の放出による気流が発生することが判明した。
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