研究概要 |
本研究においては,半溶融・半凝固押出加工のうち,特にエネルギー面やコスト面で半溶融押出加工よりも有利な半凝固押出加工に注目して,難加工性の高強度7075及び2014アルミニウム合金で,その半凝固スラリーからの半凝固押出加工を試みた.そのために先ず,これまでの著者らによる難加工性の2000系や7000系のアルミ合金を用いた半溶融押出加工の研究結果に基づいて,半凝固押出加工においても共通の問題となる高速で押出しした押出材の低延性,低強度を,Al-10%Mgと7075アルミ合金を用いて,ダイス出口から適当な位置で適量の強制空冷することで改善し,問題を解決した.次いで,2014と7075アルミ合金を素材として,細いSUS製の直立管と水冷管を組み合わせて凝固速度を制御する方法で試行錯誤を重ねて,特に後者の合金では固体粒子が平均径で50μm以下の細かな半凝固スラリーを簡便に製造できるようにした.最終的に,これらの合金の半凝固スラリーを押出コンテナ内に直接製造し,ダイス出口から下方の位置で押出材に強制空冷を行いながら,丸棒や線のみではあるが,ラム速度で20mm/sまでのかなりの高速度で,押出比100までの半凝固押出加工を行い,2014と7075アルミ合金においては,通常の熱間押出材に比べて数分の一の押出荷重と一桁以上速い押出速度で成形可能であることを示した.また,特に,7075アルミ合金においては,固相粒子の平均径が50pmの最も細かい半凝固スラリーを使用することにより,押出比36でラム速度10mm/sの凝固押出条件の場合には,強度,延性さらに,時効硬化能ともに熱間押出材に匹敵する半凝固押出材が得られることを明らかにした.従って,固相粒子径が50pm以下の半凝固スラリーを用いることが半凝固スラリーによる半凝固押出加工には必須条件であることが分かり,実用化にかなり近づけたと確信している.
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