研究概要 |
ポリマーの微粒子化において、従来の粉砕プロセスや有機溶媒を用いた再結晶化プロセスでは癒着や脱溶媒等の問題がある。近年、これらの問題を解決する方法として超臨界流体を用いたPGSS(Particles from Gas Saturated Solutions)プロセスが注目されている。この方法は、超臨界流体を溶解させた溶質をノズルから噴霧することにより急激に膨張させ、断熱冷却効果を利用して微粒子を生成するプロセスである。PGSSプロセスは超臨界流体中に溶質を溶解させる必要がないので適用範囲が広く、医薬品、触媒、顔料、生物高分子、食品などへの応用が検討されている。しかしながら、ポリマーに対する研究例は少なく、微粒化機構もよく分っていない。そこで、本研究では急膨張前の温度、圧力、二酸化炭素の濃度、ノズル内径が平均粒子径、粒度分布、粒子の形状に与える影響を実験的に検討することを目的とし、超臨界CO_2を用いたPGSS法によりpoly(ethylene glycol)(PEG)とpolyesterの微粒子化実験を行ない、生成微粒子の形状観察および平均粒径と粒度分布を算出した。これにより操作条件と生成物の構造の関係を検討した。実験の結果、分子量4,000のPEGではCO_2添加量70wt%以上,温度313K以上,圧力10MPa以上の条件で数十μm程度の微粒子を高速で製造することができた。温度の低下,圧力の上昇,二酸化炭素添加量の増加により平均径は減少し、形状は非球形へと変化した。エネルギー収支式より減圧時の温度-圧力過程を推算したところ、温度の上昇,圧力の上昇,二酸化炭素添加量の低下に従って液体で存在する時間が長くなり、このために平均径が増大し球形になることが明らかになった。しかしながら、圧力の影響に対しては実験の結果はこの推算結果と一致せず、これはノズル内の流速とせん断力の影響によると考えられた。
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