研究概要 |
本研究では,分子選択的吸着特性と光触媒による有機分子分解機能をナノレベルで複合化し,さらにその分子選択性をチューニングする可能性を検討した.環境中の極低濃度の水中有害分子を除去するためには,共存分子に阻害されずに目的分子を分解する分子認識機能が重要である.まず,酸化チタン微粒子の表面を有機修飾し,分子選択的な吸着機能と光触媒の分解機能を試みた.TiO_2微粒子表面にオクチル基を修飾した触媒(C8-TiO2)は、1000ppmのフェノール共存下でも数ppmのノニルフェノールを効率よく分解できた。アルキルフェノール類、アルキルアニリン類のC8-TiO2への吸着を比較すると、フェノール類でアルキル基の大きなものが選択的に吸着した.これは,ナノ空間内壁にオクチル基を修飾したナノ多孔シリカの分子吸着特性とは大きく異なっており,この差異は有機分子表面密度の違いによると考えられる.修飾次に,有機修飾したTiO_2担持ナノ多孔体(TiO_2-MCM-41)の特性を調べた.TiO_2-MCM-41にオクチル基を修飾した触媒(C8-TiO_2-MCM-41)は,ノニルフェノールポリエトキシレート(NPEO,平均分子量約580程度)を低濃度においても細孔内に濃縮し,光触媒による分解が起こることがわかった.有機修飾していないTiO_2-MCM-41では,NPEOの分解が観測されなかった.これは,有機修飾によりナノ空間が疎水化し,NPEOがナノ空間に特異的に濃縮吸着されたためと考えられる.実際NPEOの吸着を測定してみると,C8-TiO_2-MCM-41は低濃度側でTiO_2-MCM-41に比べてはるかに吸着量が高い.つまり,疎水化されたナノ空間にNPEOが濃縮され,細孔内に担持された酸化チタン光触媒が有効に作用したと考えられる.以上,有機疎水場と無機触媒活性部位をナノ構造に組み込むことにより,分子吸着選択性と光触媒が機能面で複合化できることがわかった.
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