研究概要 |
ゴサマー構造物とは膜面や高分子メッシュ,ケーブルのように極めて薄い,あるいは細い弾性体によって構成される構造物である.本研究では,ゴサマー構造の展開挙動および展開後の動特性・形状精度には(1)折癖,(2)膜面同士の接触(摩擦),(3)熱歪等の微小外乱によるしわの発生,の3つが重大な影響を与えることを研究代表者が自ら開発した数値解析コードにより明らかにした.また,ゴサマー構造物の例として,ロールアップ式インフレータブルチューブの展開方式を考案し,実験装置の試作および展開実験を実施した.その結果,提案する方式が従来の方式に比べて展開機構が非常に簡素な方式で,かつ,安定に展開が可能で,展開速度を調整できる方式であることを実験的に明らかにした.さらに,汎用ソフトウェア「LS-DYNA」を用いて提案する方式によるチューブの展開ダイナミクスを計算し,実験に対応した現象を再現できることを示した.次に,展開後の形状制御方法の一つとして,膜画をケーブルで支持し,その支持ケーブルの長さを調整することで膜面形状を制御する方法について検討した.その結果,材料の形状誤差だけでなく剛性誤差をも予測パラメータとする逆解析により,従来の形状制御方法に比べて少ないケーブル長さ調整作業で要求される形状を実現できることを数値計算により明らかにした.そして,これらの成果をソーラーセイルの構造動力学解析に適用し,膜面の展開挙動に対する,(1)膜面の非常に小さな圧縮剛性,(2)展開角速度,(3)膜面の大きさ,等,様々なパラメータの影響を明らかにした.そして,それらの結果を踏まえ,膜面の展開運動を評価するための指標,すなわち,(1)展開率,(2)累積歪エネルギ密度,(3)最大歪エネルギ頻度を提案し,これらの指標により膜面の折り畳み方式や展開方法の比較・評価を行なうことができることを示した.
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