研究概要 |
本研究では,凍結融解作用を受ける岩石の耐久性評価の迅速化を目的とし,ラップ法と名づける新しい凍結融解試験方法の開発を試みるとともに,凍結融解作用に対する耐久性と岩石の2,3の物理的性質の関連性について検討した。 得られた成果は以下のように纏められる。 1.含水飽和させた供試体をラップで被覆して気中で試験を行う方法(ラップ法)を考案し,このラップ法とASTM指針に準拠し供試体を水没状態で実施する標準法の2つで凍結融解試験を実施した。そして,両者における岩石の劣化進行速度について調べた結果,き裂の初生はラップ法の方が早く,早期の段階では標準法に比べラップ法の方が劣化進行速度は速くなることがわかった。しかし,き裂の進展や崩壊は,標準法の方が早く,これは,ラップ法に比べ標準法の方が,試験中の含水飽和度が高いことが原因であることを指摘した。 2.9種類の岩石を対象に凍結融解試験を実施し,岩石の劣化進行特性を明らかにした上,簡易に測定できる吸水率,圧裂引張強度と耐久性の関連性について検討した。その結果,吸水率と重量損失の間には正の相関が認められ,吸水率が小さいほど,重量損失は小さいことがわかった。また,圧裂引張強度と重量損失の間に負の相関が認められ,圧裂引張強度が2MPaより高い岩石は300サイクルまでき裂の発生が認められず,重量損失がほぼ0になることを明らかにした。そして,吸水率や圧裂引張強度から,凍結融解作用を受ける岩石の耐久性を評価できることを指摘した。
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