炭酸飲料の劣化を防ぐためにPET (Polyethylene Terephthalate)ボトル内側へガスバリア性の高いダイヤモンド状炭素(DLC)膜をコートする方法が、開発されている。しかし、PETボトルの実用的なリサイクリング工程を考慮するとDLC膜は不純物(汚染物質)として作用し、PETのリサイクリング効率を大きく低下させる要因となる。そこで、PET上に堆積したDLC膜を効率よく除去し、PETのリサイクル価値を向上させることが必要である。高周波型プラズマCVD (Chemical Vapor Deposition)装置を用い、気相反応を利用してPET上に存在するDLC膜のエッチングを試みた。このエッチング反応には、DLC膜の基本組成である炭素との反応性が高い酸素ガスを用いた。ガス圧力:10Pa、供給電力:100Wの条件では、時間の増加とともにDLC膜はエッチング深さが増える結果が得られた。エッチング時間に対するDLCのエッチング膜厚を評価すると、上記の条件では50nm/minのエッチング速度が得られた。さらに、反応表面の顕微鏡観察および光学的分光特性(Raman分光特性)よりエッチングは均一に進行していることが認められた。特に、AFM (Atomic Force Microscopy)による表面観察では、エッチング処理後の表面粗さと標準的PETの表面粗さには違いが無く、ガスによる気相反応はPET試料に対して良好なエッチング方法であることが示唆された。これらの実験結果から、DLCの除去にはプラズマエッチングが有効であることが確認された。 ETボトルへの実用的なDLC膜の厚さは、数10nm程度であるので、本実験結果〜推定されるエッチング時間は数分であることが見積もられる。工業化を目的とした場合、ランニングコストや処理時間を考慮すると実用的な可能性が評される。
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