研究概要 |
平成15年から17年度(3ヵ年)にわたる本研究により、低放射性バナジウム合金(V-4Cr-4Ti)のレーザー溶接後のイオン(2.4MeV)照射特性に関して、以下のことが明らかにされた。 1)非溶接材に存在した粒状Ti(C,O,N)析出物はレーザー溶接時の入熱により溶融部では消滅し、析出物構成元素である酸素及び窒素が不純物元素としてマトリクス中に固溶した。300℃での照射で、転位ループの形成が顕著であるが場所による違いは少ない。これはこの温度にて形成される微小欠陥の大部分が格子間原子型の転位ループであることから、溶融部でマトリクス中に固溶した不純物元素がこの転位ループの核形成に有効に寄与していないことを示す。 2)600℃照射では、溶融部において微細なTi(C,O,N)析出物が高密度に観察されたが、非溶接材では低密度であった。これは、溶融部ではマトリクス中に固溶した酸素あるいは窒素がTi(C,O,N)析出物の核形成を促進したものと推測された。 3)しかしながら、特に600℃近傍の高温領域では真空雰囲気からの酸素の混入が著しく上述したTi(C,O,N)析出物の成長が顕著となる。最終年度である平成17年度はこの不純物混入を目的として開発されたY添加合金の照射特性にも注目して、同様の実験を低温から高温領域まで実施した。 4)Y添加材は非添加材と比較して、板状のTi(C,O,N)の成長が抑制された。しかしながら、高温照射において雰囲気中から混入する酸素が完全には無視できず、さらなる材料の開発が不可欠となる。
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