研究概要 |
エチレンは高等植物において,多様な生理作用を行う植物ホルモンであり,その生合成制御の分子機構を解明することは,植物の生長調節機構を明らかにするうえで重要な課題である.高等植物においてACCシンターゼ(ACS)とACCオキシダーゼ(ACO)はエチレン合成経路の主要な酵素である.これらの酵素には多数のアイソ酵素があり,それぞれ時期や組織,また様々な環境刺激に応答して特異的に発現している.これらの酵素遺伝子のプロモータ領域に特異的に結合する転写調節因子をクローニングすることにより,複雑に発現制御されているこれら遺伝子間の発現調節の分子機構が解析できる. 本研究ではCMe-ACS2のプロモータ領域に存在するGCCGAC配列に結合するAP2/ERFタイプの転写調節因子(CMeDREB1,CMeERF1およびCMeERF2)をクローニングして酵母one-hybrid法によるDNA結合能の測定,植物葉組織を用いた一過的発現系を用いて転写調節因子としての活性を得た.その結果,CMeDREB1はCMeACS2の発現に関与していると示唆された.CMeDREB1はメチルジャスモン酸により発現が上昇することから,ジャスモン酸とエチレンシグナルのクロストークに関与している可能性が示唆された. メロンのCmACO1遺伝子はエチレンにより発現促進を受け,また果実の成熟に伴って発現が高まる.エチレンの作用はアラビドプシスのEIN3様(EIL)遺伝子が関与していることが明らかになっており,CmEIL遺伝子のCmACO1遺伝子発現への関与を検討した.メロン果実よりクローニングした2種類のCmEIL遺伝子はメロン葉を用いた一過的発現系でCmACO1の発現を促進することが明らかになった.今後,これらの実験系を用いて詳細な調節機構を検討する必要がある.
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