研究概要 |
渇感を生じさせる脳部位:ウナギの脳室周囲器官として、間脳のMagnocellular preoptic nucleus (PM)とAnterior tuberal nucleus (NAT)、さらに延髄のArea postrema (AP)を同定し、PMにはバソトシン(AVT)があり、APにはカテコールアミンがあることを免疫組織化学的に示した(Mukuda et al.,2005)。これら脳室周囲器官は渇感を生じさせる脳部位だと考えられる。 食道括約筋の収縮と弛緩:嚥下は食道括約筋の弛緩であるので、この筋を支配している神経核を逆行性にラベルし、Glossopharyngeal-vagal motor complex (GVC)を同定し、このニューロンがAChを含むことを示した(Mukuda & Ando,2003)。事実、上部食道括約筋(Upper esophageal sphincter muscle, UES:横紋筋)はコリナージックな神経支配を受けており、AChによって収縮する(Kozaka & Ando,2003)。延髄を出た迷走神経は鰓の裏側で10本の分枝に分かれるが、そのうちでX5と命名した分枝のみがUESを支配する遠心性の神経であり、この分枝が20Hzで発火した時にUESは最大の収縮を示した(Ogawa & Ando,準備中)。この至適周波数は温度やCa^<2+>-ATPaseの影響を受ける(Tamura & Ando,準備中)。またウナギのUESはAVTによって収縮し、イソトシンによって弛緩する。このイソトシンによる弛緩はcAMPを介していると思われる(Watanabe & Ando,準備中)。 食道支配の運動核:延髄のGVCニューロンの活動はカテコールアミンによって抑えられる。このことはGVCがカテコールアミナージックな神経支配を受けていることを示唆する。延髄のVagal lobe(LX), Commissural nucleus of Cajal(NCC), Reticular formation(RF), Area postrema(AP)はTyrosine hydroxylase抗体で染まることから、これらの神経核がGVCを抑制的に支配していることが考えられる(Ito, Mukuda & Ando,投稿中)。しかしAPを電気刺激してもGVCはほとんど反応せず、LXの刺激でGVCの37%に抑制効果が見られるものの、この抑制効果はカテコールアミン受容体のAntagonistsでは切れなかった。かなり複雑な神経回路網が予想される。
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