研究概要 |
ベンケイソウ科の分類体系の確立の上で、Berger(1930)のマンネングサ亜科の位置づけが最も重要であることがOhba(1978,1995)や‘t Hart(1995)の形態形質に基づく解析及びvan Ham(1995),van Ham & ‘t Hart(1999),Mort et al.(2001)の分子系統解析の結果指摘されている。 マンネングサ亜科の多様化のひとつの中心であるアジア産の所属について初めて分子遺伝学的な解析を行ない、その結果にもとづく論文をSystematic Botany 29(3)(2004)に発表した。さらに、その後明らかになった東アジア特産属Kungiaの分子遺伝学的位置について、ハンブルクで行われた国際多肉植物学会で口述発表した。それらの成果は、まもなく刊行されるK.Kubitzki (ed.), The Families and Genera of Vascular Plantsに、J.Thiedeが書くことになっている。 本研究によってベンケイソウ科は単系統群であり、クラスラ亜科とベンケイソウ亜科に2分され、リュウキュウベンケイソウ群を分った後に、東アジアに分布の中心をもつHylotelephium, Orostachysなどの属を含む一群が分れ、残りの一群から新旧両世界に分布する多様な属が派生分化したことが支持されることが判明した。分子系統樹を反映した分類体系を構築する過程で、イワレンゲ属Orostachysは3つの単系統群の複合産物であることが判明した。その1群はKungiaとして、独立の属とすることが適切である。他の2群のうちの1群はベンケイソウ属Hylotelephiumと単系統群となることが判った。この群にOrostachysのタイプを含むため、タイプを変更してOrostachysという属名を保留するか、発表年の新しいHylotelephiumをOrostachysの異名とするか、しなくてはならなくなり、国際植物分類学会連合誌Taxonにタイプ種の変更をともなう提案として発表を準備している。
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