研究概要 |
当該研究期間中、本邦各地の汽水湖沼や池沼・河口域,海域など多様な水域から自然試料を採取し,その試料から目的とする数種のケイ藻類を単離し培養株を確立するとともに,採取された増大胞子の形態観察を行った.ケイ藻類の多くは,自然界では春・秋期に有性生殖を行い増大胞子を形成する場合が多いため,新潟県や西表島など各地に出かけ,有性生殖あるいは増大胞子形成過程中の試料につては直接観察しデータとした. 2年間で増大胞子微細構造を確認できた種類は,Lampliscus属,Arachnoidiscus属,Grammatophora属,Ethmia属,Gephiria属,Eunotia属,Achnanthes属,Cocconeis属,Neidium属,Diploneis属,Amphora属,Entomineis属など30数種類に及んでいる.これら種類の光学顕微鏡観察と同時に高分解能電界放射型電子顕微鏡を使用して,増大胞子の外部形態および初生殻形成過程について,微細構造を観察した. また保存された培養株あるいは自然から採取された試料において,有性生殖を人工的に誘発させることを試み,同時に形成された増大胞子の走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った. これまで得られたデータについては,既に学会等で報告するとともに、学会誌等に掲載した. 得られた観察データに基づき,有性生殖の様式および増大胞子微細構造からケイ藻類の系統を加味した類型化を試みた.これまで未知であった数種類の増大胞子形態を観察することによって,今後の系統性の明確化に寄与できるものと思われる。
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